お母様が認知症を患われたことで、ずっとグリーフ(喪失による痛みや苦しみ)を引きずっていらした女性がいます。
彼女は、グリーフを完結させようと、WHATリカバリーが行っているグリーフリカバリーワークショップを受けて下さり、その体験を手記としてお寄せくださいました。
その後半部分をご紹介します。
前半では認知症になる前の母に対するグリーフを完結しリカバリーしたことを述べました。
そうすることで今度は、以前の母とは切り離し、まったく別人のような感じで、認知症になった後の母との関係図(※1)を書くことができました。
そして、その新しい関係図を見ることで、そこからまた新しく認知症前とは別の伝えられなかった思いが自分の中にあることに気づき、以下のように書き出すことができました。
まずは、会話が通じなくなった母に対して、冷たい態度をとったことをずっと申し訳なく思っていたのですが、結局その気持ちを伝えずじまいだったので、謝罪をしました。
そして、病気のせいとはいえ、一人っ子の私をたったひとり置いて遠ざかって行く母をうらめしく思っていたのですが、そういう思いから自由になりたかったので、母を許すことにしました。
そして何よりも、どんなに人が変わったようになってもやっぱり、母は私のことをいつも可愛がってくれてそれが嬉しくありがたかったし、私にとって母は宇宙で一番大事な大好きな人だったので、そのこともはっきりと伝えたことがなかったので、それを書きました。こう書いていると、胸が熱くなります。
そして、これらをグリーフリカバリーレター(※2)にまとめて、パートナーの前で読むことで、認知症後の母に対する私のグリーフに別れを告げることができました。
このように、母という一人の人に対する関係性を、認知症になる前と後という2つのフェーズに分けてグリーフリカバリーをやることで、それぞれのフェーズでの自分の感情を混同せずに拾い上げることができるようになったのが、とてもよかったと思います。
つまり、認知症前のしっかりしていた頃の母に対する自分の期待を、認知症後の母にまで持ち込んで同様に期待し失望するということがなくなりました。以前の期待は、以前の段階で完結したからです。
また、認知症後の何もできなくなってしまった母への愛情を、自分の中に、より純粋に確かに自覚できるようになりました。
こうしてそれぞれのフェーズの自分のグリーフに別々に「さようなら」を告げることができたので、何かとてもすっきりし思い残すことがないような気持ちになり、やっと母との関係について心から安心できるようになりました。
そうすると、母との楽しかった思い出を素直に思い出しかみしめることができるようになり、その度に温かい涙が流れるようになりました。
この「大切な人が認知症、アルツハイマー、うつ病になった悲しみやつらさを完結させるワークショップ」を開催しています。詳しくは当ホームページのイベント情報をご覧ください。
※1 関係図: グリーフが生じている相手との出会いから現在までの関係における、できごとと自分の感情を図式化したもの。ワークショップ内で作成します。
※2 グリーフリカバリーレター: グリーフが生じている相手への、伝えられなかった思いを、手紙にまとめたもの。ワークショップ内で作成し、実際の相手ではなく、ワークショップ内で組んだパートナーの前で読みあげ聞いてもらいます